PCカメラの改造

 研究室で、長時間の画像観測用にタイムラプスシステムがあったらなぁと思 うことはよくあると思います。本格的なものは十数万円しますが、簡易な用途 にそんなものをわざわざ買うなど考えられません。そこで登場するのが市販の 安価なPCカメラとフリーウェアの定点観測用ソフトです。どちらも十分な実 用性をもっています。

 PCカメラといえば以前はせいぜい30万画素でしたが、最近はメガピクセル CMOSセンサを使ったカメラが安価で市販されるようになりました。CMOSセ ンサは顕微鏡などの高度な用途に使うわけにはいきませんが、植物の生育など をモニターしたりするなら十分です。そこで、市販のPCカメラを改造してみ ることにしました。後述するように、予備実験の結果は非常に良好で、こうな ると研究用にも使いたいところですが、とりあえずは比叡山のタイムラプス撮 影用に長焦点の望遠レンズを取り付けることにしました。

 今回、使ったのはサンワサプライのCMS-V20SETSVという130万画素 CMOSカメラです。このカメラはオートフォーカスなどの余計なものがついて おらず、しかも、φ12 0.5ピッチのレンズがついているので市販のマイクロレ ンズを取り付けるだけで格段に高性能なカメラに変身します。例えば、単位共 役比デザインのレンズを付ければマクロ撮影ができるようになりますし、無限 共役比デザインのレンズを付ければ超広角から望遠まで、用途に応じて色々な 撮影が可能です。レンズを色々取り替えてみたのですが、画質は非常に良好で、 ちょっとした計測用にも十分使えることがわかりました。マイクロレンズはせ いぜい数千円ですから、数本購入しても大した額にはなりません(エドモンド オプティクスなどから購入できます)。固定標的の簡易定点観測用や各種機器 の遠隔モニター用などには十分な性能が得られますし、過酷環境用のレンズも ありますから、ケースを改造すれば恒温恒湿チャンバの中などで使うこともで きます。


 さて、今回は比叡山の撮影が目的であるわけですが、ちょっと問題が生じま した。それは、以前に比叡山撮影用のカメラを設置していた場所と違って、シ ステムが設置してある物理の学生実験室は比叡山の反対側である一番西側にあ るので、屋上にあるガス冷暖房ユニットやドラフトの排気管などが邪魔になっ て視界が限定されてしまうことです。以前のように比叡山の全景を撮したいと ころですが、USBを使うのが前提ですからケーブルを余り長くはできません。 やむなく、望遠の倍率を上げることにしました。
 CMS-V20SETSVはチャットなどに使うPCカメラですから広角レンズが付 いています。マウントのフォーカシング範囲には多少の余裕はありますが、せ いぜい焦点距離が12mm程度までのレンズしか使えません。今回使いたいのは 35mmのレンズなので、オリジナルのマウントにそのままレンズを取り付けて も合焦しません。仕方がないので、基板にネジ止めされているマウントを取り 外して黒いアクリルの板で7 mmほどのスペーサを作り、接着剤でマウントを 固定することにしました。スペーサは薄く削ったアクリル板をジクロロメタン で貼り合わせて四角を作ってからフライスで上下の面を出して平行度を確保し ています。多少画像が歪んでいる可能性はありますが、今回は比叡山を撮影す るのが目的ですからあまり堅いことは言わずにおくことにします。使ったレン ズが1/2インチ素子用の大口径のもので、中心部分の画像しか使わないので恐 らくほとんど影響はないと思われます。テストパターンの撮影などは行ってい ません。
 さて、実際の改造作業ですが、都合のよいことに、CMS-V20SETSVはCMOS センサ部とドライバ部の基板が二重になっていて多ピンコネクタでつながって おり、分離できますから改造には好都合です。CMOSセンサの基板にはマウン ト位置を示す白い四角がシルク印刷されていますから、スペーサをそれに合わ せて黒いシリコン接着剤で固定しました。硬化後、今度はマウントをスペーサ の上に同じくシリコン接着剤で固定します。35 mmのレンズを取り付けてコ ネクタを仮結線すると見事に望遠画像が得られました。






 用途に応じてケースをずっとコンパクトなものにすることもできますが、今 回は全体をABSの防水ボックスに入れるので、もとのケースの後半分だけを 使うことにしました。前半分は雲台のボールジョイントへの接続部分だけを残 して切り取ってしまいます。以前使っていた双眼鏡型のPCカメラを収納して いたケースに雲台を接着剤で固定して完成です。
 定点観測用のフリーソフトはいくつか出ていますが、今回使ったのは ListCamというものです。非常に高機能で大変よく出来ています。
 これまではレーザやマイクロポンプなどの機器の動作監視といった簡易用途 にもわざわざ数万円もするCマウントCCDカメラとグラバボードを使ってい たことを考えると、PCカメラを改造すれば信じられないほど安価で十分な性 能が得られます。しかも、ケースをとっぱらってしまえば超小型ですから光学 定盤の上や暗箱の中に設置する際に場所をとらないことが一番ありがたいです。 この手のPCカメラはいずれ全てオートフォーカスになるでしょうから、いま のうちに数台購入しておいたほうがいいかも知れません。