分子の中の光エネルギーの受け皿

 ここまで読んでこられた方ならば、光のエネルギーはピンからキリまであるのだから、きっとエネルギーの受け皿もピンから
キリまであるのではないだろうか?と思ったはずです。実際その通りで、物質を構成する分子にはマイクロ波に対応する受け皿
からX線に対応する受け皿まで、色々あるのです。では、その受け皿の中身を見ていきましょう。

 電子レンジはマイクロ波で食品(ということはそれを構成する分子)を暖めます。このことから、マイクロ波がどうも熱のエ
ネルギーに相当しているんじゃないだろうか?という考えが浮かびます。では、赤外線はどうでしょう?トースターやストーブ
で食品や身体を温めることができますね。ということはこれも熱に関係しているはずですが、マイクロ波とどう違うのでしょう?
波長から考えれば、赤外線のほうが短波長で、よりエネルギーが高いことがわかります。実は、暖まるという最終結果は同じな
のですが、最初の受け皿が違うのです。分子には赤外線のエネルギーに相当する受け皿があって、それは分子を構成する原子と
原子の間の結合の伸縮や角度の変化に対応しています。つまり、分子に赤外線を浴びせると、そのエネルギーを吸収して、分子
が振動するのです。分子の振動は熱そのものですから、結果として分子が暖まることになります。ストーブに手をかざして暖ま
っている時に、誰かが前に立ったら、いきなり暖かさは消えてしまいます。前に立った人の分子に赤外線が全部吸収されてしまっ
て、自分の所にまで届かなくなってしまったからです。同じ赤外線でも、波長の長い遠赤外線は分子との相互作用が弱く(受け
皿の数が少ない)、身体の中心にまで届くので、食品や身体の芯から温まるわけです。
 マイクロ波のほうはどうかというと、赤外線よりエネルギーが低いので、分子の中の結合を直接振動させることはできません。
代わりに、水のような「極性」をもつ(プラス電荷を帯びた部分とマイナス電荷をおびた部分がある)分子の向きをひっくり返
すことができます(バラバラな向きに並んでいるのをきれいに並べ直すといったほうがいいかもしれません)。要するに回転さ
せるわけですね。何度も何度も回転を繰り返しているうちにそのエネルギーは蓄積されていき、最終的には熱になります。
だから、水を含んだものであれば電子レンジで暖めることができるわけです。
 それでは、もう少し波長の短い可視光や紫外線はどういう現象が起きるのでしょう?

 ここまでが長い長いイントロダクションで、いよいよここからが本論です。

 このように、一口に「光」といっても非常に範囲が広く、その性質、とくに物質との相互作用についてはそれぞれ全く異なる
ことが容易に想像できると思います。