登場人物の整理

クォーク (quark)

主役。

これまでに、質量の違う 6 種類のクォークが確認されています。質量の軽い順に、アップ (u)、ダウン (d)、ストレンジ (s)、チャーム (c)、ボトム (b)、トップ (t) クォークです。これらの 6 種類を指して「フレーバー」という言葉が使われます。

一方で、一つ一つのクォークは「色」を持っています。クォークの「色」は、三原色と同じく 3 種類です。例えば、アップクォークには質量の等しい「赤」「緑」「青」の 3 色がありますし、他の 5 種類のフレーバーに対してもそれぞれ「赤」「緑」「青」の 3 色があります (クォークが本当に「赤く」見えるわけではありません)。フレーバーと「色」の掛け合わせで、クォークは全部で 18 種類が知られています。

グルーオン (gluon)

脇役。

グルーオンとは、違う「色」どうしのクォークを引っ付ける「のり」です。ちょっと数学的な考察から、グルーオンは全部で 8 種類あります。

クォークはどこにいるの ?

クォークは、'ハドロン'と呼ばれる粒子の中に閉じ込められています。ハドロンは全部でおよそ 300 種類以上もあります。原子核を構成している陽子と中性子、湯川秀樹博士が予言し後に発見された中間子などが、ハドロンの仲間です。

クォークでハドロンを作るルール

クォークは「色」を持っていますが、ハドロンは「色」を持ってはいけません。つまり、ハドロンは「白色」であり、「白色」を作るようにクォークを配置する必要があります。

「白色」を作る方法の一つは、3 色をそれぞれ一つずつ並べる事です。ちょうど、三原色の赤・緑・青の光を混ぜると白色になるのと同じですね。

もう一つ「白色」を作る重要な方法があって、クォークとその反粒子である反クォークを用いるのです。「赤」クォークの反粒子の色は「反赤」、つまり「赤の補色 = シアン」になります。クォークと反クォークで「赤」と「赤の補色」(あるいは「緑」と「緑の補色」など) を合わせると、「白色」になるのです。

例えば、u(赤) u(緑) d(青) と並べれば陽子、u(赤) d(緑) d(青) と並べれば中性子、u(赤) 反d (シアン) と並べれば π 中間子です。

グルーオンはどこにいるの ?

実は、グルーオンもハドロンの中にいます。クォークどうしを引っ付ける役をしているグルーオンは、それぞれのクォークとその間にまとわりついています。このため、まるでクォークが太ってしまっているように見えるのです。これは南部陽一郎博士が提唱した「カイラル対称性の自発的破れ」と密接に関連しています。

結局、何が難しいの?

主役であるクォークと、それにまとわりついている脇役のグルーオンは、量子色力学 (Quantum chromodynamics、QCD) という基礎理論 (ルール) に従っています。

上に述べたように、クォークとグルーオンはハドロンの中にいます。しかし、クォークやグルーオンは単体で取り出すことはできず、ハドロンの中に閉じ込められているのです。この「閉じ込められている」ことの、量子色力学による証明が、まず難しいです。

また、3 色のクォークあるいは 2 色のクォーク-反クォーク対で「白色」はできますが、例えば 4 色のクォークと 1 色の反クォークなどでも「白色」はできます。このような 4 個以上のクォークで構成されるハドロンが存在するかどうかは、分かっていません。これらのエキゾチックな構造を持つハドロンの存否を確かめるのが、難しいです。

これらの問題は、どちらも基礎理論である量子色力学を精確に解くのが非常に難しい、という性質からきています。この性質に対して、私は、真正面から取っ組み合ったり、なんとかして迂回路を見つけ出したりして、より良い道を探る研究をしています。


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