本研究室は放射線計測学研究室です。現在、国内外の実験施設で得られた原子核ハドロン実験のデータに対して「その背後にどういう物理が隠されているか」を数値シミュレーションを行なって探究しています。
本研究室では、主に以下の内容を研究しています。また、最後に研究のキーワードを解説します。
「我々の宇宙を形作る力」の一つに、「核力」があります。核力とは、陽子と中性子(合わせて「核子(かくし)」と呼びます)や陽子どうし、中性子どうしの間に働く力です。核力によって、陽子と中性子の束縛系「原子核」が形成されます。
現在、国内外の実験施設の充実により、核力の世界が大きく拡がってきています。核子のなかのアップクォークやダウンクォークを違う種類のクォーク(例えばストレンジクォーク)に人工的に変えて、核力そのものも変えることが可能になってきたのです。
本研究室では、この「新しい核力」の性質解明を実験グループと協力して進めています。
K- d → π Σ n 反応計算の結果 [2019年 10月の日本物理学会秋季大会の山縣氏の発表スライドより]
核子と Kbar 中間子の間に働く「新しい核力」は、いくつかの理論計算により強い引力が示唆されています。
Kbar N N 原子核。
原子以下のミクロなスケール (おおよそ 0.1 nm = 10-10 m) で見えてくる、我々の日常的な常識とはちょっと違った物理学。
電子が原子核に完全に落ち込まずに原子核の周りを回るのも、我々の宇宙に「スイヘーリーベー…」と多様な元素が存在するのも、量子力学のおかげ。
現在のところ、実験で確認されている最も基本的な粒子(の一種類)、いわゆる「素粒子」。
クォークには 3 つの形態があります。色の三原色になぞらえて、その 3 形態は「赤」「緑」「青」に分類されます。実はクォークは、クォークの力学(「量子色力学(りょうしいろりきがく)」という量子力学の理論の一つ)のため、単独では取り出せません。実験で直接観測されるのは後述する「ハドロン」で、それらはクォークが「白色」になるように組み合わされています。
さらに、クォークには 6 種類(アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトム、トップ)あります。しかし、我々の身の回りの物質では、原子核の中にアップクォークとダウンクォークの 2 種類が存在するだけです。その他の種類のクォークは、加速器実験で人工的に生成されます。
本研究室の影の主人公。
バリオン 陽子、中性子、Ω 粒子など 中間子 π 中間子、K 中間子など
「赤」「緑」「青」の色を持ったクォークが「白色」になるように組み合わさった粒子。「赤」「緑」「青」の三色を使った 3 個のクォークからなるバリオン(陽子、中性子、Ω 粒子など)と、ある色とその補色(例えば、「赤」と「シアン」)を使ったクォーク-反クォーク 2 体形の中間子(π 中間子、K 中間子など)が存在します。
大きさ約 1 fm = 10-15 m。
ハドロン間には、クォークの力学に起因する「強い相互作用」と呼ばれる相互作用が働きます。
本研究室の主人公。
陽子と中性子が、強い相互作用の一形態である「核力」で束縛した系。上の図では、色付きの輪一つ一つが陽子または中性子を表します(なぜこのような「赤」「緑」「青」そして「白」の色が付いているのかは、上のクォークとハドロンの解説を読んでいただければ分かると思います)。
大きさは、数 fm から 10 fm = 10-14 m。
ハドロン間に働く、クォークの力学に起因する相互作用。核力がその代表。