果樹育種の効率化と加速化技術の開発

重要形質の遺伝解析とDNAマーカーの開発

果樹は播種から初結実までに非常に長い年月(幼若期)を要するため,育種過程において果実形質の調査には多大な時間と労力・コストがかかります.また,個体サイズが大きく,育種集団の栽培に広大な面積を必要とするため,多くの個体を扱うことができません.本研究課題では,ナシやリンゴ,ウメ等の育種を効率化するために,育種目標となる果実形質の遺伝機構を解明し,実生の早期選抜を可能にするDNAマーカーの開発を目的としています.

遺伝解析とDNAマーカーによる実生選抜

早期開花技術の開発

果樹の幼若期を短縮化できれば,果樹育種を大幅に加速化することができます。本課題では,遺伝子組換え技術等を利用した早期開花系の開発とそれを利用した世代促進技術の開発を目的としています.DNAマーカー選抜技術との併用によって,果樹の品種改良をさらに効率化・加速化することを目指しています.

開花関連遺伝子の操作によるナシとリンゴの早期開花の様子
 
 
 

生理現象の解明と栽培技術開発への応用

  

野生から栽培種への変化には,果実重の増大,甘さの増大,酸味や渋味・苦みの低下が見られます.それらは突然変異によって起こった部分が多いと考えられます.本研究課題では,栽培化の機構を解明するとともに,果実の肥大促進技術等への応用を目指した研究を行っています.

ナシの野生種(左)と栽培種(右)
 

バラ科果樹の遠縁交雑に関する研究

交雑親和性の解明

植物には異種との交雑を避けて種の同一性を維持する保守的な生殖機構が存在しています.このため,種間・属間の交雑は通常成立しません.しかし稀にこの障壁が打破された場合,新しい特性を持った新種が誕生します.本研究課題では,経済的に重要な果樹作物を多く含むバラ科を研究対象として,遠縁交雑時の親和性を網羅的に調査しています.本研究室のある精華農場はナシ,リンゴ,モモ,ウメ,スモモなど数多くの果樹を保有しており,豊富な遺伝資源を活用して研究を進めることができます.春先の受粉シーズンは本研究室が最も慌ただしく,かつ活気に満ち溢れる時期です.卒業する頃には受粉作業が大好きになっていることでしょう.

  

交雑障壁のメカニズム解明

本研究室で行った交雑試験により,バラ科果樹は近縁種間においても非常に多様な交雑障壁パターンを示すことが明らかとなりました.バラ科果樹は交雑障壁機構の全貌解明とその打破方法の開発に向けた重要なモデルと捉えることができます.本研究課題では多様な植物材料や解析手法を駆使して,種間・属間の交雑障壁メカニズムを解明し,それを打破して雑種果樹を効率的に作出する技術開発を行うことを目指しています.フィールドからラボ,基礎実験から応用実験まで多彩な技術を駆使して謎に迫ります.

雑種果樹の育成とその利用

新品種作出のために一般的に用いられている同一種内の交雑では,得られる後代で生じる表現型の多様性がしばしば限界を迎えます.この問題を解決するための有効な手法が「遠縁交雑」であり、種の遺伝的多様性を飛躍的に向上させて,種特異的な農業生産上の課題を解決することができます.さらに,各種の持つ有用形質を良いとこ取りした全く新しい作物は新たな産業の創出にも繋がる可能性を秘めています.本研究課題では,遠縁交雑技術によるハイブリッド果樹の作出とその園芸的利用の可能性を検討しています.未来の有望品種の作出に関わってみませんか?

育成中の雑種実生
 

京の果樹に関する研究

京都在来品種の研究と京果樹ブランドの創世

京都には,京野菜に代表される特産農産物が数多く存在しているが,果樹に関しては,京丹後梨などのごく一部に限られる.一方で,京都において安土桃山時代から栽培の記録がある‘聚楽’(じゅらく)ブドウや青谷梅林の「城州白」(じょうしゅうはく)ウメのように,歴史的にも重要な在来品種が存在している.本課題では,在来品種の果実品質や栽培特性を調査することで,知名度の向上やブランド化に繋がるような情報や技術の蓄積を進め,これらを育種親に用いた新たな京果樹の創世とブランディングを目指した研究を行っています.

聚楽(左)と城州白(右)の結実の様子