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平山貴美子(Kimiko Hirayama)
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研究内容の紹介
森林植生は、気温や降水量、過去の植生変遷や撹乱、地形や土壌条件、生物間相互作用といった様々なスケールの生物的・非生物的環境要因に影響され、多様な植物種から成り立っています。植物は固着性であるため、森林植生は一見したところ動いていないように見えますが、実際にはそれぞれの植物から散布された種子が定着、成長並びに死亡を繰り返すことによって動的に維持されています。私は、こうした個々の植物の生き方、最近では特に周りを取り囲む様々な生物との相互作用に焦点をあて、それぞれの地域の植生において多様な植物が維持される仕組みを解明し、その保全管理に資する研究を行っていきたいと考えています。
主な研究内容は以下の通りです。
1.現在の研究
1−1.「都市近郊二次林における植生遷移メカニズムの解明」
我が国は、かつて薪炭林など人が利用する森林が広く見られましたが、燃料革命以降その多くが放置されて遷移が進行し、西日本の暖温帯域では、アカマツ・コナラを中心とする林から、シイ・カシが優占する常緑広葉樹林へと変化してきています。京都盆地周辺の森林では、特にコジイの急速な分布拡大が見られます。このコジイの分布拡大のメカニズムについて、森林構成種の密度変化が種子生産・散布、実生更新にどのような影響を与えているのかという新しい生物的観点から解明しようとしています。
1−2.「都市近郊二次林における植生遷移が種多様性に及ぼす影響の解明」
西日本の暖温帯域の森林において、植生遷移が進み常緑広葉樹林化すると、林床は暗くなります。こうしたことから京都盆地周辺の森林におけるコジイの拡大は、種多様性の低下につながることが懸念されてきました。種多様性の低下は本当に起こるのか、私達は、京都市近郊の複数林分において、植物の種数だけでなく、果実食鳥類数、被食種子散布パターン、埋土種子組成の調査を継続的に行ってきています。これらの調査からは、植生遷移が進むと飛来鳥類が増加し、種子散布や埋土種子が増加することが明らかになってきています。このような遷移に伴う生物間相互作用の変化に着目しながら、それが種多様性に及ぼす影響について解明しようとしています。
上記1−1.および1−2の研究内容でこれまで明らかになってきたことを
「京都府立大学府立植物園連携プロジェクト バーチャル植物園 −植物って楽しいな−
4.京都盆地周辺におけるシイ林の拡大」
の中で紹介しています(pdfのスライド形式となっています。クリックしてご覧ください)。
1−3.「樹木の結実量の年変動に及ぼす生物的要因の影響の解明」
森林を構成する樹木では、ある年には同調させて大量に結実するが、別の年には殆ど結実しないといった「種子生産の豊凶」がみられるものが多くあります。このような「種子生産の豊凶」をもたらすものとして、これまで気象、資源、受粉効率など様々な要因が挙げられてきています。私達のこれまでの研究からは、京都市近郊二次林を構成する多くの樹種で、開花から結実に至る過程でおこる昆虫による加害が大きな影響を及ぼしていることが明らかとなってきています。樹木の種子生産は、森林の更新を考える上でスタート地点ともなるものです。今後、各群集におけるパターンとメカニズムについて解明していきたいと考えています。
2.これまでの研究
2−1.
冷温帯スギ落葉広葉樹林における地形に対する植生推移メカニズム並びに種多様性の維持機構の解明
2−2.積雪環境下における天然スギの更新メカニズムの解明
2−3.
積雪環境が日本海側冷温帯下部における植生構成種の生態や動態に及ぼす影響の解明
2−4.
冷温帯天然スギ優占域におけるスギと落葉広葉樹の混交メカニズムの解明
2−5.分布南限域におけるニッコウキスゲの生育・繁殖状況の解明
2−6.
森林の分断・孤立化が種個体群の維持に及ぼす影響の解明
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略 歴 など
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研究業績
連絡先住所 〒606-8522 京都市左京区下鴨半木町1-5
京都府立大学大学院生命環境科学研究科森林植生学研究室
メールアドレス hirara *@* kpu.ac.jp ( *@* を@に変換してください)